音語り、東京物語2011/05/15 16:34

5年ほど前から始まった女優の中井貴恵さんの朗読に私がピアノで絡むというシリーズ、「音語り」。
絵本の「あらしのよるに」から始まり、その後小津安二郎監督の映画作品のシナリオを読むというかなりな冒険に挑戦して「晩春」「秋日和」と続けてきました。
そしてついに昨日、小津映画の代表作といわれる「東京物語」を小津さんゆかりの古石場で公演したのです。

小津作品を「音語り」でというアイディアが出た当初から「東京物語」は候補にあがってはいましたが、これは無理だということで候補から外されていた作品でした。
そこで最初は「晩春」、次の年に「秋日和」とやってきたのですが、今年はついに「東京物語」に挑戦することになったのです。

脚本を潤色してくださった山内さんは前2作の手ごたえから「東京物語」も恐れるに足らずとばかり、映画のエッセンスを損なうことなく、且つ朗読で講演するに必要十分な長さに見事にまとめあげ、素晴らしい台本を作ってくださいました。

貴恵さんの語りは長年の「読み聞かせの会」や「あらしのよるに」ですでに超一流ではあるのは証明済みなのですが、小津作品前2作の朗読でまた新たな境地を見出した上での今回「東京物語」での語り口は、絶品といってよいものだったと思います。

その語り口をより効果的に盛り上げるということに全神経を集中して私は音楽をつけていったのですが、いつもながら歌手の伴奏などと比較すると何倍も難しい作業だということが改めて実感された思いではあります。
ただ、難しいからこそ実にやりがいもあるし、楽しいというのも事実です。

映画とはそういうわけで全く違う次元の作品ではありますが、新たな「東京物語」が生まれたという思いがいたします。
山内さん、貴恵さん、お疲れ様でした。